2022年12月18日
「2022年度メール通信No.5」が届きました

日本高次脳機能障害友の会より
「2022年度メール通信No.5」が届きましたので、転載します。


全国のみなさま
 
◇理事だより
コロナ感染顛末記
日々、うなぎ上りに増えるコロナ感染者数。こうなればいつだれが感染しても不思議ではないだろうとは思っていましたが、いざ、自分事となるととんでもなく大変な事になりました。経験された方々も多いとは思いますが、遂に当事業所でも感染者を出てしまいました。しかもクラスターです。
月曜日の夕方、利用者を送り出して間もなく、その日休日の職員からコロナに感染したとの連絡が入り事業所はにわかに緊張感が走った。そう言えばさっき帰り際に一人の利用者がクシャミをして顎マスクだったので「マスクが顎では意味がないの」と声を掛けた事を思い出す。即ご自宅に連絡。まだ到着はしていなかったが、状況を説明し抗原検査と健康状態の様子を連絡するように依頼。小1時間程で連絡が入ったが「元気で熱もないが陽性でした」との事。即「とりあえず明日から1週間は閉所」を決定。送迎車に同乗の利用者宅はもちろん5人の職員達が手分けして夜8時過ぎまでかかり、利用者宅に抗原検査キットを配達し検査依頼と明日からの閉所を伝える。残りの職員達も電話連絡。次の日は朝一に職員会議を行い、それぞれの役割分担と各自抗原検査を行い自己管理の徹底を指示。市に連絡して対策の指示をもらう。濃厚接触者の割り出しのため、市からのリストアップ様式と作業時の座席の図解、昼食時や休憩時の利用者達の動線確認。これらは良くできていて、このテーブルの一群が怪しいとか、昼休みにソファーやベッド等共有する利用者の名前を挙げ、この場面が怪しい等いろいろな事が判明。その間私はスマホ2台と子機を駆使し利用者達の健康状態確認の連絡。これは一巡するのに1日中掛かった。濃厚接触者の疑いのある人。気になる一群の中から「大丈夫」と答えていた人たちの声の調子から異変を発見し、熱が無くてもいつもと違う声質から「のどに痛みは?」「少しある。」「家族に話し直ぐ検査をするか病院に相談して」と。日に日に1人、2人と感染者が遂には5人に増え、更に1名の職員も感染と。これには暗澹たる気持ちになる。夕方には私の声も枯れて電話の相手からむしろこちらを心配される始末。この作業は1週間続いた。
1週間事業所を閉めたことで利用者達の感染が落ち着きましたが、次の月曜日、2名の職員が出勤前の検査で感染が判明。土日を挟んだことと事業所を閉めていたので利用者と接触がなかった事で感染は別ルートではないかとの市からの判断に胸をなでおろす。
毎朝、検査キットにお世話になりながら、非感染の利用者受け入れですが、職員が3名欠けた中での開所。職員の負担も大変ですが、もっと大変なのが行き先を失った利用者達とその家族だったと思います。家族構成もそれぞれです。非感染・濃厚接触者ではないとはいえ自宅待機の状態では当事者はもとより家族も仕事を休むか、休めない人は職場の配慮で時短でも仕事をしなければならず、記憶障害・地誌的障害の夫の行動に気遣い30分毎に所在確認の為の電話を入れている。また感染した当事者特に半身マヒがある人はかなり機能が低下しているとの報告もあります。また、GHを利用している人はそのホームでも見守りの職員を別途配置する等、周りにも大変ご迷惑を掛ける結果となりました。
感染者を出してしまった事の反省と今後の対策をもっとしっかりとしなければならないと思いますが、現状では防ぎ様がない部分もあります。
今回それぞれ時間差で発症したことと、体調の万全を図ってからということで感染した人たちには2週間休んでもらっているが、数日前からは「僕、月曜日からまたお世話になります!」と日に何回も電話をくれる「暇でしょうがないんだけど・・・」「皆さんは元気にしてる?」「俺のやっている仕事はどうなっているの?」「俺が休んでも事業所は大丈夫?」と次々掛かてくるノー天気で喉元過ぎれば…というような電話に妙にホッとしついニンマリしてしまう。  
さて、明日の朝、皆さんどんな顔をして通所するか楽しみだ。
「マスクの正しい装着と換気、手洗い、うがいの更なる徹底と水分補給と無理せず休養を取ってください。毎度のことと思わないで、今日もしっかりやってくださいね。」
これからも毎朝のミィーテイングで1階からも2階からも聞かれることと思います。
普通、平常ってこんなに心休まるんだと改めて思います。
 
サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会、ルールもよく分からないながら、日本人選手達だけではなく世界の若人たちの全力疾走するまばゆい姿に勇気をもらい心洗われます。更に続くWBCエンゼルスの私の大好きな大谷翔平選手の活躍する姿が見られるというのはファンとしては素直に喜ばしく、これが頑張れるもとになります。
(NPO法人いわて高次脳機能障害友の会イーハトーヴ 代表 堀間 幸子)
 
 ◇報告

○高次脳機能障害学会学術総会
2022年12月2日(金)3日(土)、山形県山形市で第46回日本高次脳機能障害学会学術総会が行われました。「感じる高次脳機能」をテーマとして、今回も多様なシンポジウムや発表がありました。山形県立保健医療大学特任教授:平山和美先生の会長講演では、脳損傷により「視覚」「体性感覚」「視覚・聴覚・体性感覚」に障害が生じたケースについて、事例を通しても講演がありました。私たちは、当事者が気づきづらい脳損傷に伴う認知機能障害(記憶、注意、遂行、社会的行動障害)への対応を中心に支援を行っています。半面、気づきやすい感覚障害に戸惑いつつ生活していく様子について、損傷部位と症状と障害認識の関係を基軸としつつ、主観的障害認識を患者自身の説明・語りから紐解いていくお話を興味深く拝聴しました。
今回の大会もコロナ禍の開催でしたが、昨年の福島大会よりも参加者が多く、病院勤務医、支援コーディネーター、共同研究を行っている方等、様々な方とリアルにお会いする機会となり、現状の情報交換をすることもでき、非常に有意義な大会であったと感じました。なお、当会顧問も渡辺先生・山口先生は発表とそれぞれ「運転」「社会参加」の座長、瀧澤も「支援者」の座長を務めてきました。来年は仙台での開催となります。
(神奈川県総合リハビリテーション事業団 瀧澤 学)
 
○JDの活動から
今年も早いもので師走も半ばの頃となりました。
私は、日本高次脳機能障害友の会より、正会員団体として加盟している「日本障害者協議会(JD)」の総会などに出席し、同協議会の活動や発信される情報を皆様にお知らせする役を承っておりますが、中々その役割を果たせていなかったので、今回はこの一年を振り返って、JDの2つのトピックをご報告させていただきたいと思います。
 今月は1年の各種の順位が発表されますが、2022年の世界のニュースのワースト1は、ロシアによるウクライナへの武力による侵攻ではなかったでしょうか。2月24日のウクライナ侵略のニュースを受け、2月28日、JDは代表藤井克徳氏の緊急声明をいち早く出しました。ウクライナには270万人の障害者がおり、緊急声明では彼らの生命や生活が脅かされる戦争の即時中止を訴えています。表(おもて)のニュースからはうかがい知れなかった270万人の障害者の存在を私はこの緊急声明で知り、彼ら全員が戦火を逃れ、無事に避難をされていることを願わずにはいられませんでした。
 藤井代表はその後も幾度となく「連帯と祈り ウクライナの障害のある同胞(はらから)へ」という詩の形で、彼らに寄り添う思いをJDのホームページ上に載せていられるので、是非ご覧ください。
 また、今年の夏には障害者権利条約について大きな動きがありましたので、ご報告させていただきます。すでに新聞等で報道されていますように、8月22・23日、国連ジュネーヴ本部での障害者権利委員による日本政府報告書に関する審査が行われました。傍聴団の一員として目の当たりにした惨憺たる日本政府代表団への憤りを、そのまま文字にされた藤井代表の談話が8月26日、JDより発表されました。
 この、悲惨な結果だった審査を経て、9月9日、国連障害者権利委員会は、障害者権利条約締結国である日本への総括所見(勧告)を公表。この総括所見は、日本社会の在り方や障害者をめぐる課題を根本的かつ鋭く問いただす内容であったということです。
 日本への総括所見の発表を受け、9月14日、藤井代表は、「国連総括所見(勧告)を障害者政策の根本改革の契機に」という声明を発表しました。この声明の中で、この国の障害者政策の根本的見直しが求められているという内容が簡潔に説明されているので、是非ともご一読いただきたいので、以上の2つの談話(*資料①)と声明文(*資料②)を資料として添付させていただくことにいたしました。
 
 さて最後になりましたが、令和5年1月15日(日)に「オンライン全国大会」(*資料③)が開催されます。配布チラシを見て、12月15日を申し込み期限と受け取られた方がいるかもしれませんが、2次元バーコードからの申し込みは12月31日23時59分59秒までとなっております。これを過ぎる場合は、担当 外崎に直接ご連絡ください。
(NP0法人高次脳機能障害友の会ナナ 理事長 外﨑信子)
 
 ◇お知らせ

○臨床高次脳機能研究会えひめが1月7日(土)開催されます。会場とオンライン両方の形式*資料④
 
○広島県高次脳機能障害リハビリテーション講習会が1月22(日)開催されます。オンライン開催*資料⑤
 
○北海道子どもの高次脳機能障害研修会が12月29日(木)~1月17日(火)が開催されます。オンライン動画配信*資料⑥
 
◇書籍紹介

○歌集「ざわめき」 吉久康彦 著(発行:吉久恵子 1320円)

空虚なる日日へ陥る吾の哀し今なほ過去に縋りつつ生く(P95)
見当たらぬ自己を探して奔走しゐるも吾が夢の辺りを(P87)
耳障りなれど苦の夜をともに吐き出しゐる部屋の換気扇、愛し(P94)
 
31年前に交通事故により高次脳機能障害者となってしまった吉久君の哀しみが、孤独感がそくそくと伝わってくる歌集です。事故後覚醒した意識の行き処の厳しさに胸を打たれます。久しぶりに鈍感になった感情が上下した歌集でした。
作者は脳外傷友の会高志会員の吉久恵子氏のご子息です。
(脳損傷友の会コロポックル 篠原節)
*入手については「脳外傷友の会高志」TEL0766-91-0497にお問い合わせください。
 
◇家族会紹介

 高次脳機能障害友の会・いばらきは、筑波山の麓、つくば市に事務局(自宅ですが…)を置き、神栖地区・水戸地区・つくば地区の3地区で様々な活動を行っています。
 今回、内田様から「メール通信に家族会の紹介を載せてみませんか?」とお声を掛けていただいた時に、思わず、脳損傷友の会コロポックルさんと当会の“繋がり”のお話しをさせていただきました。それは、平成26年の当会設立10周年記念事業で、パーソナルノート茨城版「わたしのことファイル」を作製した時の事です。記念品として何か会員のためにと考えた時に、すぐに思いついたのが脳損傷友の会コロポックルさんの「パーソナルノート」でした。当事者の様々な情報を記載することで忘れがちなことも記録が出来て、適切な支援や繋がる支援にも役立つところが素晴らしいな!と思っていました。さっそく茨城版を作らせていただけないか伺ったところ「どうぞ、どうぞ、お役に立つのであれば使って下さい」とすぐにご快諾いただきました。茨城版は「わたしのことファイル」と命名して、会員と関係機関の支援者にもお贈りしたところとても好評で、会員以外の方からも送ってほしいとのご依頼があるほどでした。
 そして、それから8年が過ぎた今年度、当会も長年願っていた地域支援ネットワーク構築に向けた「高次脳機能障害支援体制整備事業」が、県の施策として始まりました。3地区に支援拠点病院が設置され、病院の支援コーディネーターが研修会や事例検討会を企画し、地域の行政、医療、福祉関係機関との連携を深めてくださっています。この事業に私たち家族会からも何か出来ないかということで、再びパーソナルノート茨城版の「わたしのことファイル」を再版し、繋がる支援のために使って頂けるよう茨城県高次脳機能障害支援センターに寄贈しました。 このように「パーソナルノート」を通して脳損傷友の会コロポックルさんと繋がれたこと、一方的な片想いになっていましたが今回こうしてご報告が出来ました。改めて、このように役立させていただいたことに大変感謝申し上げます。
 私たちの家族会は“さまざまな方々との繋がり”を大切にしたいと思っています。そんな繋がりから出来ている事業も多くありますので、当会の主な活動をご紹介します。
 
◇主な活動

▶︎  家族・当事者・支援者との地区集会を水戸・神栖・つくばの3地区にて開催しています。そして平成2年度からは隔月で「当事者会」を開催し、高次脳機能障害支援センターの相談支援コーディネーターと臨床心理士、そして言語聴覚士がサポートしてくださっています。この集会の参加者は当事者と支援者と当会の担当者だけで、送迎の家族は別室で待つことができます。この場の話は他では話さない、会話の順番が回って来ても話をしたくなければパスもOKなどのルールがあり、誰でも安心して参加することができます。楽しみに来てくれる方達が増え、受付や会場準備などの役割分担も自然に行われ、仲間意識も出来てきた様子です。そして、支援センターから紹介されて参加する当事者もいて、「当事者会」は共通の経験や悩みを持つ者同士、ピアカウンセリングの場になっているようです。
▶︎   会報「筑波のかえる」を年4回発行、今年度11月に56号が発行されました。
▶︎   孤立してがんばっている家族が疲弊してしまう前に、支援につながる手助けをすること、共感を持って少しでも元気になれるようにという目的で「家族会交流室」を開いています。これは、自分たちの苦しい体験の中でこういう手助けが欲しかったという思いから始めた事業です。すでに平成25年から実施していますが一般市民の相談者も参加ができ、専門的な相談には高次脳機能障害支援センターの相談支援コーディネーターに対応していただき、その先の支援にも繋がっています。
▶︎  年に一度、高次脳機能障害に関連する知識習得・向上のための学習会を開催しています。
▶︎   福祉団体や行政機関などから依頼を受け、高次脳機能障害の障がい理解の為の研修会などで、当事者や家族が体験を発表しています。
▶︎  作業療法士会からの支援を受け、「日帰りバス旅行」や「調理会」などを企画し活動しています。当事者は作業療法士ならではの適切な支援を受け、家族も普段の生活とはまた別な空間を楽しみ、レスパイトケアになっています。
▶︎   「独立行政法人 自動車事故対策機構」の助成を受け、高次脳機能障害とその支援に関する知識の普及啓発を目的とした「茨城県リハビリ講習会」を年2回開催、当会も実行委員として協力しています。
▶︎  茨城県高次脳機能障害支援センターが主催で、茨城県の高次脳機能障害支援の施策について話し合う「高次脳機能障害者支援ネットワーク協議会」に委員として参加しています。
▶︎   県に家族会からの要望書を提出、後日県からも内容についての回答書をいただいています。
▶︎  茨城県福祉部障害福祉課の職員と、高次脳機能障害支援センターの職員、そして当会役員が集まって懇談会を年に一度行っています。ざっくばらんな雰囲気のなか、当会が毎年県に提出させていただいている要望書の回答書を基に、進捗状況をお聞きしたり、家族会として普段気になっている現状の報告をしたりしています。また、要望書の項目には「高次脳機能障害支援法制定」に向けて茨城県からの働きかけをお願いして、懇談会においても話し合っています。これらのことを「行政の机上だけでは良いアイデアは浮かばない」と言ってくださって、忌憚のない意見交換の場を設けてくださっています。
▶︎  ホームページの掲載
このような活動は役員だけではなく、様々な機関、様々な方達が協力をしてくださって出来ています。今後の課題は多々ありますが、やはり役員の高齢化は避けられない問題になっています。SNS等で情報はいつでも手に入る時代になりましたが、家族会の存在意義はそれだけではなく、とても大きなものと信じて活動をしています。これからも様々な方達との連係プレーで、どうにか続けられるだけ、頑張っていこうと思っています。