2022年4月15日
2022年度メール通信No.1が届きました

日本高次脳機能障害友の会から「2022年度メール通信No.1」が届いたので転載します。


◇理事だより
 高次脳機能障害者支援法(仮)制定に向けて

 はじめに、ロシアによるウクライナ侵略に関する、耳を塞ぎたくなるようなニュースが連日報道されていますが、私は、この国際法の深刻な違反といえるロシアの行動に対し、この世における最も強い言葉で非難いたします。この侵略で、亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、怪我をされた方、家族や友人と離れ、言いようのない不安を感じている方々に、心からお見舞いを申し上げます。
 このような情勢の中、コロナウイルスに関してもすっきりとした解決を見ず、気分が沈んでいる方もいらっしゃると思います。しかしながら、この状況をなんとか踏ん張って、私たちが前向きに取り組めることを模索し続けなければなりません。
 さて、高次脳機能障害者支援法(仮)制定をテーマに掲げ、昨年実施した「日本高次脳機能障害友の会2021年オンライン全国大会」から、約半年が経ちました。
 日本高次脳機能障害友の会としましては、定期的に国会議員会館に足を運んだり、関係各省庁の方々と意見交換をさせていただいたりと、いつも通りの地道な活動を継続しております。振り返れば、このような活動を積極的にはじめて5年以上の月日が流れました。数年前と比べて、国や行政における、高次脳機能障害に対する理解が確実に進んでいるという実感が、今の私自身の中にはあります。先日の厚生労働省社会保障審議会障害者部会における資料ひとつを取り上げましても、高次脳機能障害という言葉がたくさん記載されています。ようやく議論のテーブルにのったと感じているところです。こういった地道な活動が実を結ぶ日がくることを信じて、これからも継続してまいりたいと思っています。
また、大きなイベントとしましては、毎年、日本高次脳機能障害友の会も共催団体として参加している、「アメニティ―フォーラム25」において、「作る法律~高次脳機能障害者支援法の早期成立を~」というテーマを取り上げていただく予定でしたが、コロナウイルスの影響でフォーラムの開催が2月から5月へと延期になりました。5月に無事開催されれば、このフォーラムで、高次脳機能障害者支援法(仮)についての議論をさらに深めたいと考えております。
各地の当事者・家族会におかれましては、これまで通り、高次脳機能障害の理解促進、普及啓発活動に取り組んでいただき、各地でのトピックスや、好事例・困難事例等を全国の仲間に共有していただくことをお願い申し上げます。
引き続き、高次脳機能障害で困っている方に対する当事者・家族目線を軸に置いたサポートができる団体、他者の気持ちを考えて行動のできる団体として活動していきたいと考えておりますので、日本高次脳機能障害友の会に対し、これまでと変わらないご協力をよろしくお願いいたします。
              (日本高次脳機能障害友の会 理事長 片岡保憲)

◇報告

○「令和3年度第2回高次脳機能障害全国連絡協議会・高次脳機能障害コーディネーター全国会議」について

令和4年2月25日(金)10:00-12:00に高次脳機能障害全国連絡協議会、13:00-16:00高次脳機能障害コーディネーター全国会議が開催されました。

 午前中の高次脳機能障害全国連絡協議会について、各ブロック会議の検討課題への質疑応答が行われましたが、従来行われていたブロックごとの報告とは異なり、新鮮に感じました。

午後の高次脳機能障害コーディネーター全国会議では、まず、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課より「支援普及事業と政策研究の動向」に関する報告がありました。
続いて、シンポジウムでは「高次脳機能障害の診断方法と診断基準に資する研究」と題して、① 慈恵医大第三病院渡辺医師が実施したアンケート調査について報告があり、ADLは自立している方が多いがIADLに課題がある方が多く、診断評価や精神障害者保健福祉手帳取得まで時間がかかる方がいることについて確認されました。
さらに、② 国立障害者リハビリテーションセンターが行った拠点機関向けの診断実態調査では、適切な診断や診断書を作成できる医師が不足している現状についての報告がありました。また、家族向けの調査と支援機関向けの調査結果を比較することで、「医療職・行政・福祉職の知識不足や診断できる医師不足」は支援拠点機関と当事者団体の回答が一致していたが、「画像所見がない、神経心理検査結果が正常範囲内の場合は高次脳機能障害と診断されない」については支援拠点機関と当事者団体で差異が生じた、とのことでした。
最後に、サポートネットひろしまに所属する当事者さんより「長期間高次脳機能障害との診断がつかず、就労がうまくいかないたけに家族会に相談したことがきっかけに支援につながることができた」との発表が予定されていましたが、体調不良のために代読となったことは残念でした。
http://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/shien/r3-1/
          (神奈川県総合リハビリテーションセンター 瀧澤 学)

○国交省から「今後の自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会」に関する情報が入りました。中間とりまとめを踏まえた制度の見直しについて、「自動車損害賠償保障法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha02_hh_000486.html

閣議後記者会見におけるやりとりがNHKのWEB版に掲載されています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220225/k10013500651000.html

○4月5日に国会内で【長編ドキュメンタリー映画『いのちみつめてー高次脳機能障害と現代社会』の完成披露試写会】が開催されました。日本高次脳機能障害友の会顧問の渡邉修先生が参加くださり、挨拶されました。

◇お知らせ

○「第11回日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会 東京大会」(資料添付)
開催日:2022年6月25日・26日
開催方法:オンライン
参加申込受付:4月20日~6月18日
参加申込フォーム:https://forms.gle/QajzaNoa261x69ix7 
研究・実践発表申込:4月11日~5月14日

〇「アメニティーフォーラム25」
開催日:2022年5月6日~5月8日
開催場所: びわ湖大津プリンスホテル(滋賀県大津市におの浜4-7-7)
追加参加申し込み受付:4月13日〜4月28日
参加申込フォーム:https://www.event-form.jp/event/25832/amenity25?g=entry 

◇家族会紹介

『脳外傷友の会「しずおか」』
令和4年度がスタートしました。結局昨年度もコロナに振り回された一年でした。
これまで脳外傷友の会「しずおか」では月1回、東部・中部・西部に分かれて勉強会を行っておりました。当事者も家族もその1ヶ月間の報告をし、時には悩みや愚痴を言い合っていました。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、開催ができない月がありました。また、基本の活動は各地区で行い年数回(総会他イベント)は3地区交流を行ってきましたが、新型コロナウイルス感染の状況が地区によって違いがあり、集まることが難しくなりました。令和4年度も予定通りには勉強会の開催ができないと予想しています。
病気や事故などで高次脳機能障害になり、人とのつながりがそれまでと変化する方も中にはいます。友の会の集まりを大事に考えてくれる方がいる中で開催中止を決めるのは本当につらいことです。
また、会の開設当時からの会員さん・家族は、高齢化しています。健康面や生活面での心配も増えているのではないか、と顔を見てお話できずこちらも心配が膨らんでいます。
どうにかやりとりができればと総会の案内や、クリスマスのカード・プレゼント(NHK 歳末たすけあい助成事業)と共に、返信はがきを送付しました。近況など返信いただいたメッセージを会報に掲載して、共有しました。
静岡県では、県・支援コーディネーター・協力病院・家族会とで協力し、県健康福祉センター圏域ごとの支援体制を構築することを目指しています。支援される側の代弁者としての家族会の役割を理解していただき、協力体制の一部として組み込んでいただけていることをうれしく思う反面、これをずっと続けていけるわけではない、と不安も感じています。
2月の全国協議会・全国支援コーディネーター会議にはオブザーバー参加をしました。他の地域での取り組みからヒントを得られる機会だと捉えています。これまで常々問題だと感じていた高次脳機能障害を診断できる医師・支援者の知識の不足が、調査結果にはっきり数値として現れていました。やはり、「高次脳機能障害者への支援体制は構築された」とはまだまだ言えない、と感じました。
日本高次脳機能障害友の会の顧問の先生方の後押しも大きく関わっているかと思いますが、調査結果として当事者・家族の意見が取り上げられる機会が増えたように思います。数年前までは支援コーディネーター会議のグループワークなどに参加する際、自己紹介で「家族です」と伝えると「え?」と驚かれていました。(&身構えられていました。←これは私の勝手なイメージかも。)「支援者でもあり、家族」という意味で伝わらない気がしていました。それでも話をしていく中で、支援者も家族会も困っていること、問題と考えていることが同じだとわかりほっとしました。今回報告のあった調査結果にも表れていたと思います。

それぞれの地域で家族会が「支援者でもあり、家族である」立場として、支援に関わっていく機会が増えることで、「高次脳機能障害者への支援体制は構築された」と言えるようになることを願っています。
              (脳外傷友の会「しずおか」 代表 小関理子)