2023年10月16日
「2023年度メール通信No.4」が届きました

NPO法人日本高次脳機能障害友の会より
「2023年度メール通信No.4」が届きましたので転載します。


全国のみなさま

◇理事だより

JD(日本障害者協議会)という団体について、少し説明をさせてもらいます。
JDは現在、障害福祉に関わる国内の60の正会員団体によって構成されています。日本高次脳機能障害(旧日本脳外傷)友の会では初代理事長の東川さんの頃に正会員団体となり、東川さんはJDの副代表も務められていました。
 現在、東奔西走されている片岡理事長の代理として私ナナの会の外崎がJDの総会等に出席しております。今回は外崎よりJD総会と、高次脳機能障害に関わるトピックについてご報告をさせていただきます。
 令和5年度のJDの総会は5月26日戸山サンライズを会場として、4年ぶりの対面開催となりました。特に開会冒頭の挨拶では、藤井代表よりRI100年記念賞を受賞の報告がありました。これは1922年創立のRI(Rehabilitation International/国際リハビリテーション協会。リハおよび障害者の権利を推進する国際組織で、日本では、JDの他、日本障害者リハビリテーション協会と高齢・障害・求職者雇用支援機構が加盟)が100周年記念として100団体・個人に授与したものだそうで、総会の5日前に藤井代表自身が北京での授与式に参加し、メダルと賞状を受けてきたとのことで、非常に明るい話題から今年の総会は始まりました。
 総会の議案審議は粛々と進められ、お昼を挟んで午後からは総括所見(勧告)を学びあう政策会議が、開かれました。こちらは会場とオンラインとの組み合わせで行われました。
 政策会議では、まず藤井代表から「私たちを取り巻く情勢と総括所見(勧告)へのコメント」の中で、日本への勧告では、分離処遇(教育や就労など社会全般で障害児・者と健常児・者との間を分離する施策)や精神科医療の非人道性・非人権性などが指摘されたが、建設的対話によってさまざまな分野で、どの角度からみてもこちらを見ているような新しい社会にしていくことが大切との言葉がありました。
 続いて、勧告を受けて、7つの分野に関しての報告・提言が11のJD加盟団体からありました。分野の違いや地域格差など抱える問題は諸々ありますが、日本には「障害者権利条約」の締約国としての責任があります。中央政府だけでなく地方行政へも、条約を意識した取り組みを求めていき、そうした取り組みが広がることによって大きな力となり、政府の方が変わらざるを得なくなるのではないか、など総括所見に対する期待や今後の活かし方など、加盟団体間の様々な意見交換の場となりました。
 さて、JDでは機関誌として「すべての人の社会」が月1回発行されています。今年7月号(No517)で、“合理的配慮違反訴訟”として会員の皆様の中にはご存知の方も多いと思いますが、「ミカちゃん裁判」が「勝利的和解~障害特性の理解と合理的配慮」と題して見開き2ページで取り上げられていました。それは原告だった“ミカちゃん”ご自身による経過と思いをつづった文章でした。一審では被告側の主張が認められ、障害者が社会で活躍できるようもっと努力すべきという耳を疑うような内容の判決が出ました。控訴審の最中、JDは①障害者雇用の促進及び安定を確実に達成することを認定要件とする特例子会社で起こった事件であること、②採用時と採用後で上司が変わり、個人的価値観で障害ならびに合理的配慮の理解が異なっていること、③障害理解を深め、合理的配慮を浸透させるべき役割を持つ司法が、原告の症状を認めながらも判断を誤り、多様性を受け入れていこうという社会目標に逆行した判決を下したこと、を重大な問題として指摘する声明を出しました。(JDホームページに掲載)
 この、上司が変わった途端に職場環境が激変して、精神的に追い詰められて退職を余儀なくされたというのは、高次脳機能障害を持つ当事者の就労を語る際、しばしば耳にする話です。文中で彼女が記している裁判に至る経過は克明で、JDが出した声明は、私たち高次脳機能障害に関わる全ての人の思いを代弁するものだったと思います。
 又、10月1日に開催された日本高次脳機能障害友の会の全国大会の会場では、JDの副代表の石渡和実氏(東洋英和女学院大学 名誉教授)の姿が見られ、「支援法」制定に向けての家族会と支援者の熱意と熱気を肌で感じ取っていただけたのではないかと確信しております。              
(NPO法人高次脳機能障害友の会ナナ 外﨑信子)

◇報告

○日本高次脳機能障害友の会全国大会2023in東京を終えて
4年ぶりの対面開催となった今年の日本高次脳機能障害友の会全国大会は、「高次脳機能障害者支援法の制定に向かって」をテーマに、JA共済ビルカンファレンスホールでの開催となりました。久しぶりの対面開催ということもあって、日本全国から300人を超える当事者や当事者家族、支援者が集まり、活気ある全国大会となりました。
最初は、渡邉修先生から「高次脳機能障害者への関わりから見えてきたこと」と題し話題提供していただき、次に、私より「高次脳機能障害者の社会的な障壁と、法制化の必要について」話題提供させていただきました。
その後のシンポジウムでは、冒頭に、公務により参加できなかった自民党参議院議員の衛藤晟一先生からのビデオメッセージを頂戴し、高次脳機能障害者支援法の制定に向かって、力強いお言葉をいただきました。その後、日本高次脳機能障害友の会顧問の瀧澤学氏の進行のもと、自民党衆議院議員の田畑裕明先生、公明党参議院議員の山本博司先生、厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長の小林秀幸氏、国立障害者リハビリテーションセンター顧問の深津玲子氏と共に登壇し、高次脳機能障害者支援法成立に向けた、前向きな意見交換をさせていただきました。
会が終了しても熱気は冷めず、会場の至るところで交流を深めている場面が印象的でした。コロナ禍の影響で対面開催ができない状況が続いておりましたが、友の会は対面開催で交流を深めることに意義があるとあらためて気づかされた全国大会でもありました。来年は日本高次脳機能障害友の会全国大会in福島でお会いしましょう。
(日本高次脳機能障害友の会 理事長 片岡 保憲)

○日本高次脳機能障害友の会 臨時総会
とき:令和5年10月1日(日)11時~ ところ:JA共済ビルカンファレンスホール
全国大会に先立ち、日本高次脳機能障害友の会臨時総会がJA共済ビルカンファレンスホールにて開催されました。理事および監事に加え、顧問、運営会員、準会員の皆さまに多く参加していただきました。
 臨時総会では、日本高次脳機能障害友の会としての取り組みについて理事長から報告があり、全国の皆さんと意見交換をすることができました。監事の古謝さんからは国土交通省からのパンフレットの紹介があり、前副理事長だった濵田さんからは当時者MI・HO・KOさんの書籍(書籍紹介参照)の紹介などがありました。メール通信やホームページ更新等についても意見交換をさせていただき、今後の運営に活かせることができるお声をいただいた臨時総会でした。

*会員の皆さまへ
日本高次脳機能障害友の会のホームページを閲覧していただき、貴団体情報で修正等ございましたら事務局(info@biaj.net)までメールいただければと思います。

○日本高次脳機能障害友の会全国大会2024 in福島の情報
開催日時と開催場所が以下の通り決定し、1月には実行委員会を発足させ、テーマを決定する予定です。プログラム等は決まり次第、メール通信等でご案内いたします。
開催日時:令和6年10月4日(金)・5日(土)
開催場所:福島県郡山市ホテルハマツ3階

○その他
新ノーマライゼーション 2023年9月号
【特集 高次脳機能障害者支援の今】として、「 高次脳機能障害者支援法(仮)の制定に向けて」片岡保憲理事長、「 高次脳機能障害友の会ナナ~家族会の活動の現状と課題」外﨑信子副理事長、「あの日から変わってしまった、うちの子は…」中村千穂理事、「家族の声」堀間幸子副理事長、『高次脳機能障害のある方のご家族への「高次脳機能障害の診断」に関するアンケート調査』渡邉修先生が執筆されています。
(日本高次脳機能障害友の会 事務局 岡村 忠弘)

◇お知らせ

○日本高次脳機能障害学会学術総会
日時:2023年10月28日(土)~29日(日)
場所:仙台国際センター(仙台市青葉区青葉山無番地)
*詳細はhttps://www.congre.co.jp/jshbd2023/index.html

○徳島高次脳機能障害リハビリテーション講習会 資料①
特別講演:「ナスバ 自動車事故対策機構について」
講師:独立行政法人自動車事故対策機構徳島支所 支所長 梅本 篤氏
講演:「高次脳機能障害患者の看護について」
講師:徳島大学病院 脳卒中・心臓病等総合支援センター
   脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 岩瀬 司氏
日時:2023年11月18日(日)13:00~16:00
場所:徳島大学病院西病棟11階日亜メディカルホール
参加方法:会場・ZOOM同時配信 要申し込み(チラシに記載)

○いわて脳損傷リハビリテーション講習会(盛岡) 資料②表
基調講演:「高次脳機能障害がある方への支援~住み慣れた地域で生活していくために~」
 講師:神奈川リハビリテーション病院 総合相談室 室長 瀧澤 学氏
シンポジウム:「住み慣れた地域で生活し続けていくために必要なこと」
 シンポジスト:小林 亮太氏(いわて高次脳機能障害友の会イーハトーブ会員)
        堀間 幸子氏(いわて高次脳機能障害友の会イーハトーブ代表)
 コーディネーター:山舘 圭子氏(栃内第二病院リハビリテーション部 副部長)
日時:2023年11月25日(土)14:00~16:30
場所:岩手県自治会館 第二会議室

○いわて脳損傷リハビリテーション講習会(一関) 資料②裏
基調講演:「脳損傷と高次脳機能障害」
 講師:独立行政法人 国立病院機構 岩手病院 副院長 齋藤 桂一氏
シンポジウム:「地域で生活しつづけていくために必要なこと
~当事者・家族・支援者 それぞれの想い~」
シンポジスト:細谷 文崇氏(当事者)
       小林 真由美氏(いわて高次脳機能障害友の会イーハトーブ会員)
       佐々木 理恵氏(一関市社会福祉協議会 一関障害者生活支援プラザ
               相談支援専門員)
 コーディネーター:上田 大介氏(いわてリハビリテーションセンター 総合相談科長)
日時:2024年1月14日(日)13:30~16:00
場所:一関文化センター 小ホール

○札幌高次脳機能障害リハビリテーション講習会 資料③
「障がいを持った私と就労」
1部:体験談・支援報告
就労移行支援事業所クロスジョブ札幌(当事者1名 支援者)
こころのリカバリー総合支援センター(当事者1名 支援者)
2部:Q&Aコーナー
日時:2023年11月19日(日)13:00~16:00
場所:北海道大学学術交流会館講堂
参加方法:今年度は会場で開催します
*後日見逃配信予定(配信希望 バーコードで申込)
*事前質問受付(バーコードで受付)

○函館脳外傷リハビリテーション講習会 資料④
講演:「高次脳機能障害の相談支援~対応のポイント~」
 講師:神奈川リハビリテーション病院 総合相談室 室長 瀧澤 学氏
講演:「壊れているのは脳か社会か」
 講師:日本高次脳機能障害友の会 理事長 片岡 保憲氏
日時:2023年11月11日(土)13:00~15:00
場所:函館国際ホテル

○あいち高次脳機能障害支援フォーラム 資料⑤
~「支えてほしい」と「支えたい」をつなげたい~
第1部:「必要とする支援とは」
 講師:日本高次脳機能障害友の会理事長 片岡 保憲氏
第2部:スーパー座談会
 当事者の立場から 鈴木 大介氏
 家族の立場から 柴本 礼氏
 家族・支援者の立場から 片岡 保憲氏
日時:2023年11月25日(土)13:00~16:00
場所:名古屋市中区役所ホール
*要申込み(11月17日締切)

○石川県高次脳機能障害リハビリテーション講習会 資料⑥
「高次脳機能障害の生きづらさを考える」 
第1部 講演:「脳損傷によって招じる感情と行動の障害~原因を理解して対応を考える~」
第2部 体験談:「本人と家族が笑って生きるために」
講師・助言者:京都光華女子大学健康科学部医療福祉学科 教授 精神科医 上田 敬太氏
日時:2023年12月3日(日)14:00~16:00
場所:石川県リハビリテーションセンター4階大研修室
*参加は要申込(2023年12月1日まで)
*オンデマンド配信(2023年12月25日~2024年1月19日)~要申込

◇書籍紹介

○「事故から始まるAnother Life やっとつかんだMy Life」
(文芸社1200円+税 著:MI・HO・KO)
 ミホコさんは25才の5月にカナダで交通事故にあう。40日間後覚醒したが、高次脳機能障害者となっていました。事故前に目指していた英語教師にもなれず、それでも人の役に立ちたい思いが強く努力に努力を重ねたミホコさん。作業療法士の学校にも通ったけれど2年で挫折してしまいました。
何度も助かったことを恨んだ  
何度も生き地獄だと思った  
何度も命を捨てようとした

そんなミホコさんが周囲の家族、友人、医療関係者に支えられ、明るく前向きに生きている姿が描かれています。中でも一番の支援者は、事故前から婚約していたご主人の存在です。ミホコさんの障害を理解し受け入れ、ミホコさんの人生を優しく包み込み、高次脳機能障害と共に生きていこうとする姿勢に感銘を受けました。
よかった 自分に負けないで 
よかった 生きるのをあきらめなくて  
よかった 歯を食いしばって生きてきて

こんな優しい彼に会ってみたい。もちろんミホコさんにも。
(脳損傷友の会コロポックル 篠原 節) 

◇家族会紹介

1「福岡・翼の会」の歴史と特徴
私たちは,高次脳機能障がい者に対する社会的な認知も行政の支援もなかった平成12年から,福岡県で高次脳機能障がい者とその家族を支援する活動を続けてきました。平成18年には,念願であった,九州で初めての高次脳機能障がい者のための作業所として,福岡市小規模作業所「翼」が誕生しました。その後,運営主体の解散により,「翼」を存続させるために作ったのが,NPO法人福岡・翼の会です。それにともない,「翼」は地域活動支援センターとなりました。
 福岡・翼の会は,福岡県の高次脳機能障がい者の支援に長年携わってきた実績に加え,専門性も特徴としています。高次脳機能障がい者の支援には,医療,リハビリ,福祉,法律などさまざまな専門分野が関わり,各分野の専門家の参加が必要ですが,当会は,交通事故等によって高次脳機能障がいを負った被害者の損害賠償事件を数多く担当してきた弁護士が理事長をつとめ,当事者の家族のほか,精神科医,臨床心理士,言語聴覚士など,高次脳機能障がい者の治療・リハビリに豊富な経験を持つ専門家が理事として参加して,専門的知見を活動に生かしています。      
     
2 地域活動支援センター「翼」の活動内容
私たちが運営する地域活動支援センター(Ⅱ型)が「翼」です。
「翼」では,高次脳機能障がい者の社会参加を支援するために,受託作業のほか,グループワーク,リハビリ教室,音楽療法,ヨガ,ストレッチ,パソコン教室など,利用者のニーズに合わせたさまざまなメニューを用意しています。このほか,施設見学やお花見などの外出活動や,スポーツ大会などの外部のイベントへの参加も行っています。和やかな雰囲気の中で,当事者がそれぞれの特性や興味に応じた活動に参加し,自分らしい生き方や社会への参加を実現していく,そんな場所が「翼」です。
  
3 「福岡・翼の会」の家族会活動
私たちは,「翼」を運営するとともに,当事者や家族を支援する家族会活動を行っています。年に数回開かれる家族交流会では,高次脳機能障がい者の支援に豊富な経験を持つ専門家を交え,いくつかのグループに分かれて情報交換や交流を行っています。バスハイクや楽しいプログラムが満載のクリスマス会など,みんなが参加するイベントも用意しています。もちろん,全国大会にも毎年参加しています。昨年からは,高次脳機能障がいを抱える子どもの家族も家族会活動に参加しています。  
(NPO法人福岡・翼の会 理事長 小野裕樹(弁護士))

■日本高次脳機能障害友の会メール通信の編集は、理事 内田由貴子(脳損傷友の会コロポックル副代表)が担当しています。高次脳機能障害のニュース、各地の家族会の活動、情報などをお寄せください。

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NPO法人 日本高次脳機能障害友の会
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事務局 岡村 忠弘
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