2024年2月19日
日本高次脳機能障害友の会よりメール通信No.6

NPO法人 日本高次脳機能障害友の会より「2023年度メール通信No.6」が届きましたので転載します。


全国のみなさま
 
 ◇理事だより
「バリア」って? 

*当事者目線抜きだった                  
 時は昔、私は1995年厚生省(当時)のホームヘルパー養成研修で学び2級を取得した。資格を活かし職業にする方も多い中、私は資格取得者達で構成するボランティアサークルに加入した。市内の老人クラブの慰労会や老健施設、養護支援施設等でのボランティア活動に参加する程度で、福祉とか障害にさほど深い関わりはなかった。資格取得の動機も不純で当時はホームヘルパーが珍しい資格だった事と、将来老いた両親を介護する時に役に立つだろう位の思いからだった。その経験を生かすチャンスは程なくやってきた。自宅を改築するにあたり、家の内は全てバリアフリーにして、家中に手すり付け玄関先から車庫までの距離をスロープにし、将来両親が車いすを使うであろう時に備えた。その3年後息子が26歳で交通事故に遭い重度の高次脳機能障害と身体障害者になった。両親の為のつもりが代を飛び超えて子供の為になるとは思いもしなかった。退院後間もなく歩行もおぼつかない息子がスロープ上で転倒ししたたかに背骨を打ち付けた。眼動マヒの残った息子にとって長く緩やかなスロープはとても怖い代物のらしかった。しかもスロープには手摺が無い。
父は孫の為に直ぐにコンクリートのスロープを壊し玄関先に2段の階段と手すりを取り付けた。息子は段差を意識できるからこの方が安心だと。私は愕然とした。深く考えず良かれと先走り無用な代物を設置した事が仇となっのだ。自分の愚かさと大失態を深く反省した。
家の中は敷居が無い。その事に体が馴れ部屋から部屋への移動も特段意識もせず足を上げて歩く事もなく過ごしている。その為か老化のせいか私はちょっとした段差にも躓くようになった。バリアフリーにして良かったことは手すりだけだったのか? 別にバリアフリーが悪いというのではなく、当事者目線を置き去りにしてお仕着せの善意がことごとく外れてしまった事例である。

*バリアに鍛えられた日々
当事業所は昔病院だった古い木造の2階建てだ。そういう意味ではバリアだらけだ。補助金で改修工事を行い私たちはお世話になって14年。エレベーターは無いので利用者も職員も日々2階への移動は階段を利用しなければならない。その階段は広くゆったりとしていて踊り場はさしずめ利用者達の作品の画廊となっている。体幹機能障害や片麻痺で杖歩行の人も視力障害の人も1日に最低3往復はこの階段を利用する。初めは手摺に体を預けるようにして昇降していた人が、多少の差はあるが1年もすると片手で手すりに捕まり昇降できるようになってくる。どうやら目に見えるバリアはあった方が知らず知らずのうちに体幹や脚、意識や感覚を鍛えているようだ。老いた階段は人が昇降するとギューッ、ギューッ、ギイー、ギイーと鳴き、元気な利用者が昇降するとギィ、ギィッと鳴く。階段の下で仕事をする私には今誰が下りてきたか、利用者でも職員であっても判別できるようになりほぼ間違う事はない。決まって私の口から出る言葉は「階段にも優しくね!」だ。ある日利用者の一人に「堀間さんが昇って来た事も足音で分かるよ」と言われた。別の利用者が「そう、そう階段の音で体調まで分かる!」と。なんと・・・であった。
この施設はもう60年以上も前の建物で地震が起こる度に壁にひび割れができる。その都度幅広テープで補強するなどすっかり老朽化していてる。いつかは移転をと考えてはいたが昨年末、大家さんから相続を理由にいきなり退去を求められた。現在全く行先の目途は立っていない。これまで6回検討委員会を開き、市の障がい福祉課ともやり取りし、心当りの用地・物件を当たってはいるがいろいろな規制や制限にぶち当たり事は中々進まない。
大きい課題は資金が無い事だ。

*みんなの夢をのせて
しかし、新しく建てられるだろう施設は、利用者や職員達の夢や希望、理想を十分に盛り込みたい。そこで廊下に模造紙を張り出した。直書きや付箋紙にそれぞれの夢や希望を思い付いた時に、自由に書いて貼り付けてもらうことにした。「屋上が欲しい。」「玄関はもっと広く2か所に」「トイレをもっと増やして」「近くにコンビニやブックオフがあればいい」「トレーニングマシンがある部屋」「喫茶店をやりたい」「安全なスナック」「昼寝ができる部屋を」等など色々ある中で「階段はあってもいい」があった。私はその書き出しの横に赤ペンで!!と書き足した。
さて、今日はどんな付箋が増えるか楽しみだ。二度と同じ失敗はしたくないから。
(NPO法人いわて高次脳機能障害友の会イーハトーヴ代表 堀間幸子)
 
◇報告
○アメニティーフォーラム27に参加
滋賀県のびわ湖大津プリンスホテルで開催されたアメニティーフォーラム27に参加してきました。日本高次脳機能障害友の会からも役員を中心に十数名が参加させていただきました。日本全国から900人を超える方が集まり、活気あるフォーラムでした。
 高次脳機能障害に関連するセッションとして『政治家に聞く!「障害者の地域生活をさらに推進するために必要なこと」~障害者基本法の改正と、そろそろ高次脳機能障害者支援法の成立を~』が行われ、聞き手の野澤和弘さん(毎日新聞客員論説委員)の進行のもと、衛藤晟一先生(自民党障害児者問題調査会会長)、山本博司先生(公明党障がい者福祉委員会事務局長)、田畑裕明先生(衆議院議員自民党厚生労働委員長)、滝波宏文先生(参議院議員自民党障害児者情報コミュニケーション議員連盟事務局長)、宮路拓馬先生(衆議院議員 元内閣府政務官・自民党国会対策委員会副委員長)、田中伸明さん(日本視覚障害者団体連合評議員・弁護士)、久保厚子さん(全国手をつなぐ育成会連合会顧問)がご登壇され、特に、衛藤先生、田畑先生、山本先生から、今年中に高次脳機能障害者支援法成立を目指したいと、力強い言葉を頂戴しました。
 また、今年のアメニティーフォーラムでは日本高次脳機能障害友の会はブースも用意していただき、来場者に高次脳機能障害についての広報活動も実施できました。来場者からは日頃の支援で困っていることの相談や応援など沢山のお声がけをいただきました。
(日本高次脳機能障害友の会理事長 片岡保憲)
 
◇お知らせ
○令和5年度第2回高次脳機能障害支援普及全国協議会
主  催 国立障害者リハビリテーションセンター
日  時 令和6年2月16日(金)10:00~12:00 
開催方法 Web会議方式(Zoom使用)
対  象 高次脳機能障害支援普及全国連絡協議会委員
*その他オブザーバー傍聴の申し込みは締め切りました(1/25)
http://www.rehab.go.jp/application/files/3017/0347/0871/R52.pdf
 
〇令和5年度第2回支援コーディネーター全国会議・シンポジウム
主  催 国立障害者リハビリテーションセンター
日  時 令和6年2月16日(金)13:00~16:20 
開催方法 Web会議(Zoom使用)
対  象 高次脳機能障害支援拠点機関に所属する支援コーディネーター
*その他オブザーバー傍聴の申し込みは締め切りました(1/25)
http://www.rehab.go.jp/application/files/9917/0347/0891/R52.pdf
 
〇令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要が発表されました。
https://npo-biaj.sakura.ne.jp/top/top/2024/02/07/r6kaitei/
友の会として要望していたことが具現化しました。
診療報酬(医療)でも高次脳機能障害退院支援加算(公認心理師等による適切な神経心理学検査を行い、地域の福祉サービス(介護・障害福祉等)に情報提供した際の加算)が認められることも切望します。
 
〇山陰放送で小学 4 年生で高次脳機能障害となった中学生の活動が取り上げられました。 https://news.yahoo.co.jp/articles/f046a6360850f996d65eee3bb183ffaed1b2841a
 
◇家族会紹介
「埼玉県が小児の高次脳機能障害のリーフレットを作成します」
初めまして。埼玉県の高次脳機能障害のこどもを持つ家族の会ハイリハキッズ埼玉で代表をしている齋藤です。
ハイリハキッズ埼玉は東京のハイリハキッズから名前を頂いて2018年に始まりました。最初の参加は2~3家族、児童精神科のデイケアルームをお借りして、ママたちでランチを持ち寄りお喋りするスタイルで活動していました。活動は不定期でしたが、埼玉県の小児の高次脳機能障害に対する理解が進まず、医療や支援の仕組みがない中で参加されるご家族の相談は深刻な内容が多かったです。でも子供は成長しますし、家族は立ち止まっていられない。皆さん悩みは深刻ですが、逞しく子育てされています。
その後コロナウィルスが流行してから、長い期間定例会はお休みとなり、自分の子供も高校卒業が見えてきたので、実はこのままハイリハキッズ埼玉は無くなってしまうのかなと思う時期がありました。
たくさんの出会いに背中を押されて
そんな矢先、同じ地域で大人の家族会がスタート、お子さんが学齢期に受傷されたご家族様が主催者だった縁で繋がり、また埼玉県でピアカウンセリング事業を行っている「共に地域を生きるナノ」の支援者の方とも出会い、背中を押される形で埼玉県議会議員の金野桃子さんをご紹介いただきました。
金野議員が問題意識を持って令和4年9月、令和5年6月の定例会一般質問に小児の高次脳機能障害の支援について取り上げて頂いた事で(2回も同じテーマで一般質問に取り上げて頂くのは異例の事らしいです)一気に流れが変わっていきます。家族会に県の職員さんが参加下さる様になり、小児の高次脳機能障害についてリーフレットを作成する事が決まりました。リーフレットの内容を決める打ち合わせに太田令子先生やハイリハキッズ代表の中村千穂さんもご参加下さり、埼玉オリジナルのリーフレットは完成間近です。
どんどん小児の高次脳機能障害の施策が進んでいます
そして2024年1月の終わりには埼玉県高次脳機能障害理解促進セミナーで「こどもの高次脳機能障害を知ろう」というテーマで講演も行われました。
また埼玉県第7期障害者支援計画では小児の高次脳機能障害について支援ニーズを把握し、研修による普及啓発を行っていくという案が新設される予定です。一人では到底ここまでできる事ではないですし、やはり人と人との、そして理解してくださる方と繋がった事はとても大きかったと感じます。
現在、家族会は3か月に一回程度の不定期開催(場所は色々)ですが、参加のご家族様は9家族に増えました。年に一回の大宮でのランチ会も復活して盛り上がりました。診断や回復期、受傷後地域に戻ってからのサポートなどまだまだ課題はありますが、それでも行政が動き、障害について興味を持ってくださる方が増えれば、地域で生活する当事者のお子さんやご家族の力になる事は間違いないと考えています。
(ハイリハキッズ埼玉 世話人 齋藤 恵美)

 ■日本高次脳機能障害友の会メール通信の編集は、理事 内田由貴子(脳損傷友の会コロポックル副代表)が担当しています。高次脳機能障害のニュース、各地の家族会の活動、情報などをお寄せください。(E-mail:koropokkuru@mail.goo.ne.jp)

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NPO法人 日本高次脳機能障害友の会
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事務局 岡村 忠弘
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