2022年6月16日
NPO法人 日本高次脳機能障害友の会より

NPO法人 日本高次脳機能障害友の会より
「2022年度メール通信No.2」が届いたので転載します。
くわしい添付データ等がご入用でしたら、稲毛まで連絡ください。


全国のみなさま

◇理事だより

 新しい年度を迎え、今年の行事や講習会などの検討でお忙しい時期かと思います。脳損傷友の会コロポックル(以下「コロポックル」)は、5月14日に2年ぶりに対面で無事総会を開催することが出来ました。少しずつですが、コロナ禍前の家族会の活動に戻りつつあり、実際に会って話すことができることの有難さを改めて感じます。
 
 コロナ禍以前から、コロポックルでは、折に触れて高次脳機能障害者の地域生活を支える核になる存在として、障害児・者相談支援事業所(以下「相談支援事業所」)のことを伝えてきました。具体的には①困っていること、悩みの相談②一人暮らしを希望する当事者の住まいを探す③その人に合った日中活動の場を探す④必要な人には家事援助のヘルパーを手配し⑤時には金銭管理をサポートし⑥手帳や年金の更新など役所の手続きをサポートする。相談支援事業所の相談員には、まだまだ、書ききれないほど様々な社会資源につなげる支援を受けています。
そんな介護保険で言うとケアマネジャーのような働きをしている相談支援事業所ですが、昨今存続が危うくなっているのではないかと感じています。

 ひとつは、(指定)相談支援事業所が単独で運営するのが難しいことです。相談支援事業所の主たる収入は、障害福祉サービス利用のための支援計画作成のみとなっているためです。

*例えば、就労継続支援B型事業所を利用する方を1年担当すると、「サービス利用支援費1552単位」「継続サービス利用支援費1260単位」の報酬を受け、年間27,820円の収入となる。
**介護保険を担当する居宅介護事業所(ケアマネジャー)は、介護保険のデイサービスを利用する方を1年担当すると、毎月「居宅介護支援費1076単位」の報酬を受け、年間129,120円の収入となる。(必ずしも居宅介護支援事業所の収入が十分なわけではありません)

 家族会の脳損傷友の会コロポックルとは別組織ですが、同じ敷地でNPO法人コロポックルさっぽろが運営する相談室コロポックルも、ぎりぎりの経営状況が続いていて、相談員を担当するスタッフの忙しさを垣間見て、この体制を何とかしないと相談支援事業所の存続が難しくなるのではと案じています。

 もうひとつは、札幌市内の相談支援事業所がパンク状態なのではないかということです。札幌市には市の委託相談支援事業所が19か所、指定相談支援事業所は75か所あります。委託相談支援事業所が昨年3か所閉鎖し、新規に3か所開始と近年撤退する事業所が散見されます。また、委託相談支援事業所から、相談室コロポックルへ支援計画を引き受けてもらえないかというケースの依頼も頻繁に見受けられ、業務が適正量を越えてしまっている状態が伝わってきます。(収入が見合わないことも撤退の原因のひとつと思います)
コロポックルは、家族会設立23年目を迎え「親亡き後の支援」に、相談支援事業所とつながることが欠かせないものと考えています。皆さんの地域では、相談支援事業所の危機が生じていないでしょうか。
(脳損傷友の会コロポックル 副代表 内田 由貴子)

◇報告

○総会・理事会のご報告
令和4年5月22日に「令和4年度 特定非営利活動法人 日本高次脳機能障害友の会の通常総会」を開催いたしました。ご参加いただきました運営会員(正会員)の皆様、ありがとうございました。第1号議案の令和3年度事業活動報告(案)・活動計算書(案)、監査報告、第2号議案の令和4年度活動計画(案)・活動予算(案)、第3号議案の、次期、理事・監事(案)について、すべての議案が承認されました。
また、総会後の理事会において、理事長及び副理事長の互選がなされ、次期役員から、理事長に私、片岡保憲、副理事長に堀間幸子理事と外崎信子理事が人選されました。また新しく理事にハイリハキッズ(東京都)の中村千穂さん、監事に脳外傷友の会高志(富山県)の山加代子さんをお迎えしました。次期理事体制は以下となります。
(日本高次脳機能障害友の会 理事長 片岡保憲)

理事長:片岡保憲  脳損傷友の会高知 青い空(高知県)
副理事長:堀間幸子  いわて高次脳機能障害友の会イーハトーブ(岩手県)
副理事長:外崎信子  高次脳機能障害友の会ナナ(神奈川県)
理事:内田由貴子  脳損傷友の会コロポックル(北海道)
理事:遠藤良一  高次脳機能障害友の会・うつくしま(福島県)
理事:河田幹子  高次脳機能障害友の会みずほ(愛知県)
理事:中村千穂  ハイリハキッズ(東京都)
監事:山加代子  脳外傷友の会高志(富山県)
監事:古謝由美  脳外傷友の会三重TBIネットワーク(三重県)

○会員の皆様へご報告
今回のメール通信で私から、あと一点だけ嬉しいご報告をさせていただきます。
自民党の古川康先生が中心となってくださり、自民党障害児者問題調査会に、「高次脳機能障害者支援に関するプロジェクトチーム」を設置いただけることになりました。
設置日は6月15日と伺っております。このプロジェクトチームは、高次脳機能障害についての現状と課題を踏まえ、当事者及びその家族の人権と尊厳を守り、安心して生活できる社会に寄与するよう、取組の具体化を図り、強力に推進することを目的として設置されるものです。今後は、このプロジェクトチームを軸に提言とりまとめに向けて動いてくださると思います。私たちの活動の前進を感じるニュースだと思います。これからも力を合わせて活動してまいりましょう。
(日本高次脳機能障害友の会 理事長 片岡保憲)

◇お知らせ

○令和4年度第1回「高次脳機能障害支援普及全国連絡協議会」「支援コーディネーター全国会議」が令和4年6月29日(水)10:00~16:15に開催されます。詳細は以下をご確認ください。
http://www.rehab.go.jp/application/files/9416/5223/9510/R4-1_.pdf
http://www.rehab.go.jp/application/files/2316/5223/8575/R4-1__.pdf

○令和4年度 高次脳機能障害支援・指導者養成研修会(基礎研修)が令和4年7月20日(水)~ 7月22日(金)に開催されます(申込締切は令和4年6月14日(火)17:00)。詳細は以下をご確認ください。
http://www.rehab.go.jp/College/japanese/kenshu/2022/pdf/R4-9_outline.pdf

○日本障害者協議会の機関紙『すべての人の社会』2022年5月号に東川悦子さん(元日本高次脳機能障害友の会理事長)が寄稿された記事が掲載されました。*添付①

○Reジョブ大阪の会員情報誌『脳に何かがあったとき』2022年5月号に「かがわ高次脳機能障害友の会ぼちぼち」代表の合田仁さんの記事が掲載されました。合田さんの発症から復職、現在に至るまでのことが紹介されています。*添付②
Reジョブ大阪の詳細はこちらをご覧ください。 https://re-job-osaka.org/ 

◇書籍のご紹介

○『今日はくもり、明日は晴れ~みんなが読める、高次脳機能障害7人の物語~』
 昨年、北海道大学病院リハビリテーション部がクラウドファンディングで寄付を集めて出版が実現しました。注文は、添付記事のQRコードまたはhttps://kokopro.official.ec から申し込みを。送料・手数料込みで1冊1160円、2冊2290円、3冊3380円。詳しい申し込み方法は北大病院リハビリテーション部TEL011-706-7010(担当・玉川さん)*添付③

○『東大教授、若年性アルツハイマーになる』(講談社) 若井克子著
 もし、あなたの家族が若年性アルツハイマーになったら、あなたはどう受け止め対応し、共に生きていきますか?50代で若年性アルツハイマー病になった元脳神経外科医であり、東大教授であった若井晋さん。地位も知識も言葉も職も失った夫と共に、新しい人生の旅に出た妻の書いた本です。夫の病を冷静に受け止め、家族だけでなく周囲の人々にも病を公表し、多くの人々に支えられ、信仰もご夫妻の大きな支えでありました。
夫の変化の受け止め方に教えられました。例えば、昼は叫び続け、怒鳴り声を出す時の夫の心境を「できない自分にイライラして攻撃的になるんだな」叫び声は、「自分のところに来て来てといってるんだな」と思い、意味不明の言葉を出す時は、「しっかり耳を傾けて意味あるものとして聞き取れば夫も安心して落ち着く」という文章に、思わず「そうなんだ、そういう受け止め方もあるんだ」と教えられることが多々ありました。
あるがままを受け入れた夫妻は、何を見て何を得たのでしょう。
高次脳機能障害者と共に生きる私たち家族にも通じるこの一冊をおすすめします。
(脳損傷友の会コロポックル 篠原 節)

◇家族会紹介

『奈良高次脳機能障害友の会「あすか」』
 2001年5月「奈良脳外傷友の会あすか」を設立しました。今年で21年目になります。
奈良県総合リハビリテーションセンター (旧奈良県心身障害者リハビリテーションセンター)の自立訓練センター入所者と退所者との交流会を基に立ち上げました。心理士の先生からの声かけで集まり、私たち家族はお手伝いのはずだったのに、先生の転勤のため家族で運営していくようになり、友の会設立の機運が盛り上がっていた時でしたので、その機運に乗じ設立したという所です。
 立ち上げたものの指導者がいるわけではなく、日本脳外傷友の会会長東川悦子さんからの情報が頼りで、必死に付いていきました。全国の会長が集まる時は、何か参考にすることはないかと各地の動きを一生懸命に聞いていました。ただ先進地域との落差は、人・施設・お金のどれも大きくて(奈良県の人口は日本全国の約1/100、川崎市より少ない)、具体的に活動の参考になる話はあまりありませんでしたが、その問題意識の高さや姿勢進むべき方向性の面では、大変参考になりました。それまで行ったこともない奈良県庁にも毎年足を運び、厚労省で聞いてきたことや全国の動きを伝え、会員の困りごとを訴えるようにしてきました。
 会の活動は、毎月第2日曜日午後定例会と本人達の集まり「あゆみの会」を開催します。「あゆみの会」は、OTとSTさんにサポートしてもらっていますが、リードしないで本人達がやりたいことを具体化していくというスタンスです。各自の発表がメインで、それを板書しながら話を整理していきます。その時お互いの意見や質問も取り上げ、本人にフィードバックをします。その他に小さなイベント(お花見・クリスマス会・料理など)、これらの企画会議もします。おやつの時間は楽しそうにおしゃべりしています。その様子を横目で見ながら、同じ部屋で家族は定例会をやっています。会の運営について、リハ講習会の計画、そして相談したい人が来られたらまずはその人の話を聞き、我々の持っている知識や体験から、その人の参考になりそうな話をします。でも今はコロナの感染拡大を避けるために集まることはなしです。参加したために感染したということは避けたいです。重症化リスクを抱えた本人もいるし、もし感染した場合はその本人だけでなく濃厚接触者として家族も自宅待機をしなければならないですし、家庭によっては当事者以外にも高齢者の面倒をみている人もいます。なすすべなく開店休業でした。計画中の1泊旅行も頓挫しています。ただ、感染者の減少傾向があるので「ミニあゆみの会」を、6月に再開したところです。
 「あすか」の活動目的の中に「社会に働きかけて理解を求めていくこと」があります。過去17年間で22回の「奈良高次脳機能障害リハビリテーション講習会」をやりました。もちろん先生方のご協力あっての開催ですが、その事務局として、準備、段取り、当日の裏方、そして報告をこなしてきました。毎年参加人数は150人前後です。
 「あすか」は会員数30人から40人くらいの小さな会で、NPO法人格もとっていませんが、これまでの活動を認めてもらったのでしょう、県は「高次脳機能障害者家族等支援事業」という名目で少額ではありますが予算をつけてくださいました。金額云々より、私たちの活動を信頼していただいたのだと思います。
 会設立から21年経って、役員の高年齢化が問題です。なかなか後任が見つけられなくて困っています。後を託せる人が出てくるまでは華々しい活動が出来なくても、会を存続させ、困っている人・行政のどちらに向けても窓口であり続けることが必要なのだと考えています。       
(奈良高次脳機能障害友の会「あすか」  代表 大久保 康子)

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NPO法人 日本高次脳機能障害友の会
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事務局 岡村 忠弘
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